自動運転自動車が物体を検出する機械学習モデルに対し、超音波を用いて誤った結果を導くという「ポルターガイスト」攻撃の研究成果を中国・浙江大学などの研究グループが発表している(GitHub プロジェクトページ、 The Registerの記事、 論文: PDF)。
ポルターガイスト攻撃は研究チームが AMpLe (injecting physics into Adversarial Machine Learning) 攻撃と呼ぶ、機械学習モデルに対する物理的な攻撃の一つ。超音波のほか、可視光や赤外線、レーザー、電波、磁場、熱、液体などを用いてセンサーの出力を操作し、誤った結果を導くというものだ。今回の研究は現行の製品ではなく、まだ見ぬ将来の自律走行車がどのように映像スタビライズシステムへの音響攻撃を回避していくかの理解を深めることが目的だという。
映像スタビライザーの加速度センサーやジャイロスコープは音響共鳴攻撃に弱いことが知られており、ポルターガイスト攻撃もこの仕組みを用いてセンサーをコントロールし、被写体ぶれした映像を出力させる。機械学習モデルによる物体検出は映像のぶれの有無に左右されるため、攻撃者は物体を消す (Hiding Attacks: HA)・存在しない物体を作り出す (Creating Attacks: CA)・物体の種類を変える (Altering Attacks: AA)という3種類の攻撃が可能になる。
実験で使用した物体検出モデルは研究用の YOLO V3/V4/V5 と R-CNN、商用の Apollo で用いられている YOLO 3D の5種類。シミュレーションでの攻撃成功率は HA で100%、CA で87.9%、AA で95.1%。実際に走行する自動車で Samsung Galaxy S20 を用いた実験では HA 98.3%、CA 43.7%、AA 43.1%という結果になったとのこと。ポルターガイスト攻撃はさまざまな場面や天候、時刻、カメラ解像度にかかわらず安定した結果を出したそうだ。
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Source: スラッシュドット