放射冷却で外気温よりも表面温度を下げることが可能な塗料を研究している米パデュー大学の研究チームが、昨年発表したものよりもさらに冷却能力の高い超白色塗料を開発した(Purdue University Newsの記事、 SlashGearの記事、 The Vergeの記事、 論文アブストラクト)。
放射冷却は波長8~13マイクロメートルの赤外線を放射する物体が冷却される現象だ。この波長領域は大気中でほとんど吸収されずに宇宙へ放出されることから「大気の窓」とも呼ばれる。同研究チームが昨年発表した塗料は炭酸カルシウムとアクリル塗料を組み合わせたもので、粒子を幅広いサイズに分布させることで反射率95.5%、大気の窓における放射率0.94を実現していた。
研究チームが今回開発したのは硫酸バリウムを用いたナノ粒子のフィルムとナノコンポジットのアクリル塗料だ。白色塗料や造影剤などに用いられる硫酸バリウムは高バンドギャップにより太陽光吸収率が低く、波長9マイクロメートルのフォノン共鳴により大気の窓における放射率が高い。炭酸カルシウム-アクリル塗料と同様に硫酸バリウムの粒子を幅広いサイズに分布させた結果、フィルムは反射率97.6%、大気の窓における放射率0.96に達し、フィールドテストでは環境温度より4.5℃以上低く、平均冷却能力は117W/m2だったという。硫酸バリウムを60%配合した塗料の反射率は98.1%、大気の窓における放射率は0.95に達する。
同チームが提唱する放射冷却指数(RC、大気の窓における放射率1、反射率100%の理想的な表面を1とする)は前回の炭酸カルシウム-アクリル塗料では0.49だったのに対し、硫酸バリウム-アクリル塗料では0.77という現在の放射冷却技術の中でも高い部類に入る値が得られたそうだ。この塗料で1,000平方フィート(約93 m2)の屋根に塗装すれば10KWの冷却能力が得られ、多くの家で使われているセントラル空調よりも高能力だと研究者は語る。反射率98.1%の硫酸バリウム-アクリル塗料は現在最も白い塗料であり、研究者は現在最も黒い素材の一つとされるVantablackに相当すると考えているとのことだ。
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Source: スラッシュドット