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AGPLv3 に Commons Clause を追加するとオープンソースライセンスでなくなるか

headless 曰く、

ライセンスに AGPLv3 と Commons Clause を組み合わせたソフトウェアをオープンソースと呼べるかどうかについて、米連邦地裁と控訴裁判所が判断を誤ったと Software Freedom Conservancy (SFC) がブログ記事で指摘している
(SFC のブログ記事
The Register の記事)。

この裁判はグラフデータベースソフトウェア Neo4j を開発する米 Neo4j Inc., とスウェーデン子会社が元パートナー企業を訴えているものだ。Neo4j は GPLv3 ライセンスで機能制限あり・サポートなしの Community Edition と、商用向けの機能を多数追加した Enterprise Edition (EE) が提供されている。被告の PureThink は Neo4j と EE の販売・サポートを行うパートナー契約を結んでいたが、顧客へのライセンス供与に関する契約違反によりパートナー契約を打ち切られたという。

元々 Neo4j EE は有償の商用ライセンスと、非商用向けに無償の AGPLv3 ライセンスで提供されていたが、バージョン 3.4 では無断の販売やサービス提供を防ぐため、オープンソースライセンスとみなされなくすることを意図して無償ライセンスを AGPLv3 + Common Clause に変更した。しかし、それでも被告の PureThink などは EE をフォークした Open Native Graph DB (ONgDB) を EE 代替のフリーでオープンソースなソフトウェアなどと主張して販売を続けたという。そのため、Neo4j は商標権侵害や虚偽の広告、不正競争防止法違反などを理由に PureThink などを提訴し、バージョン 3.5 では商用ライセンスのみに変更した。

Commons Clause はライセンシーにソフトウェアの販売を禁ずる条項で、オープンソースライセンスに追加することを意図して作られているが、追加するといわゆるオープンソースライセンスとはみなされなくなる。一方、AGPLv3 ではより厳しい制限を課す条項の追加を禁じており、追加されている場合は削除できると定めている。被告側はこの点で Commons Clause を削除できると主張したが、1 審のカリフォルニア北部地区連邦地裁では AGPLv3 がより厳しい制限の追加を禁じているのはライセンシーに対してであり、ライセンサーに対する制限ではないと判断。ONgDB をフリーでオープンソースな EE の代替だと主張することなどを禁ずる事前差止命令を含む部分的な略式判決(PDF)を出した。

今年 2 月には連邦巡回区第 9 控訴裁判所が 1 審判決を支持する判決(PDF)を出しており、Open Source Initiative (OSI) はオープンソースライセンスでないものをオープンソースと呼ぶことを禁じる画期的な判決とする一方で、AGPLv3 ではより厳しい制限をライセンシーが削除できる点が無視されていることを示唆していた。

今回、SFC のブログ記事は AGPLv3 の共同起草者である Bradley M. Kuhn 氏が執筆している。AGPLv3 第 7 条第 4 段落 (※) ではライセンシーが受け取ったソフトウェアのライセンス条項から AGPLv3 で定めるものよりも厳しい制限を課す条項を削除できること、この条項は今回 Neo4j が試みたようなことを防ぐために存在すること、元のライセンサーが対象外なら条項の存在意義が薄れることなどを指摘。AGPLv3 では一部の条項だけを抜き出して新たなライセンスを作ることを認めているにもかかわらず Neo4j は全文の使用を選択したのであり、Commons Clause の削除を止めることはできない。そのため SFC は市民の義務として、裁判所の結論が間違っていることを世間に知らせる必要があるとのことだ。

※注: 第 3 条第 4 段落と表記されている部分もあるが第 3 条は 2 段落しかなく、内容から見て第 7 条第 4 段落の誤記とみられる

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Source: スラッシュドット