アディダスが製造する FIFA ワールドカップ用のサッカーボールは、大会ごとに新たな改良が加えられているそうだ
(Ars Technica の記事)。
2002 年までのボールは革製の六角形パネル 20 枚と五角形パネル 12 枚を縫い合わせた伝統的なサッカーボールだったが、2006 年ドイツ大会では 14 枚の滑らかな合成素材パネルを熱融着したボール「Teamgesit」が使われて新しい時代が始まった。アディダスは新しい素材と新しい技術を用い、パネルの数や接合方法、表面の粗さを調整して適切な空気力学が得られるよう取り組んでいるという。しかし、2010 年南アフリカ大会で使われた「Jabulani」は表面を滑らかにしすぎて抵抗係数が大きくなり、急に速度が落ちるなどと選手からは不評だった。
2014 年ブラジル大会で使われた「Brazuca」と 2018 年ロシア大会で使われた「Telstar 18」はともに表面素材に粗さを加えて空気力学特性を調整し、選手からは好評を得ていた。今回の 2022 年カタール大会で使われている「Al Rihla」はポリウレタン素材のパネル 20 枚が水性接着剤で貼り合わされており、表面はディンプル加工により滑らかな触感と良好な空気力学特性を両立させているという。
空気の流れが乱流から層流に変わると抵抗係数が急上昇し、速度が急激に低下する。風洞実験によれば多くのワールドカップボールは時速 58 km 付近で空気の流れが変わるのに対し、Jabulaniは時速 82 km 付近だったそうだ。多くのフリーキックが時速 97 km を超える程度の速度から始まることを考慮すると、選手が Jabulani の動きを遅く、予測困難と感じた理由が納得できるという。Al Rihla は Brazuca や Telstar 18 と同様の空気力学特性を持つが、低速時にはより速く動く可能性があるとのことだ。
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Source: スラッシュドット